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シーナ・アイエンガー [つぶやき]

選択の科学 シーナ・アイエンガー.jpg
アメリカのコロンビア大学教授に、シーナ・アイエンガーという全盲の女性がいます。
何年か前にNHKの「コロンビア白熱教室」で特別講義の模様が放映されましたので、ご存じの方も多いと思います。
私もテレビで観て、面白かったので本を買って読みました。

本の題名は「選択の科学」です。
洗う方の「洗濯」ではなくて、選ぶ方の「選択」です。
英語の原題だと
The Art of Choosing
だそうです。
直訳すれば「選ぶことの技術(技芸)」という感じなのでしょう。
でも、これでは日本語としてはちょっと座りが悪い。

彼女の学問は、
人間が何かを「選ぶ」行為にどんな意味があるのか、
どのように「選ぶ」ことが望ましいのか、
といったことを科学的な手法で理論的に深めるものです。
ですから、「選択の科学」と訳したのはさすがプロの翻訳というところですね。

さて、なぜ彼女はこのような学問を志したのでしょうか?

(以下、著書からの抜粋です)
 両親よりもアメリカでの生活に慣れていたわたしは、アメリカンドリームの何たるかを、二人よりずっとよくわかっていた。特にその中心にある、光り輝くもの、とてつもなく明るいために、目が見えなくとも見えるものに気がついた。
 それが、「選ぶ」ということだった。
(訳 櫻井祐子)

シーナ・アイエンガーの両親は、彼女が生まれる頃にインドからアメリカに移住したそうです。
アメリカに移住しても、厳格なシーク教徒としての信仰は変わらず、着るものから結婚相手に至るまで、宗教の戒律や両親がすべてを決めるという家庭で育ちました。

ご存じのとおり、アメリカの社会では子供のうちから自分のことは自分で決めるという考え方が当たり前ですから、家庭と社会ではまるで両極端なのです。
ですから、そのことが、「選ぶ」とはどういうことなのかを、より深く考える契機となったようです。

シーナは幼い頃から、よくものにぶつかる不注意な子、と思われていたそうです。
それは実は網膜色素変性症のせいで、視力が低下していたためでした。
そして、高校に上がる頃には完全に失明してしまいます。
さらに、13歳のときには、父親が突然病気で亡くなってしまうという不運にも見舞われます。

まるで、塙保己一(はなわほきいち)の生涯を思い出すような話です。
きっと保己一と同様に、彼女がここまで来るまでには、幾多の苦難の道のりを乗り越えてきたのだろうと思います。

NHKで放映された特別講義では、長時間、わかりやすくよどみのない、巧みな話術で学生を引き込みました。
もちろん台本やメモなど見るわけもないので、話す内容も構成も全部覚えて、時間を計算しながら話している訳です。

またしかし、覚えていることを一方的に話すような講義ではありません。
とにかく、しょっちゅう学生に対してさまざまな質問を投げかけ、答えによってはさらにするどい二の矢、三の矢の質問が飛んできます。
そして、学生から返ってくるユニークな回答をまたネタにしながら講義を面白く進めていくので、学生も視聴者も居眠りしている暇はない、という感じでした。

日本から撮影に来ているテレビの視聴者にも配慮しているのか、野球の松井選手が大リーグ挑戦という道を「選んだ」ことをひきあいに出して説明するなど、聞く相手に対するサービス精神もしっかり兼ね備えている、ということもうかがえます。

テレビの映像の中では、日本で見かけるものより、ちょっと頑丈そうで重そうな白杖をしっかり持って歩く、ピンと背筋ののびた姿が特に印象的でした。

By MI

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